小学生が算数力を競い合う、算数オリンピック。今回は、ファイナリスト経験3回、さらにファイナル大会で入賞を果たした筆者が、算数オリンピックの概要と、オススメの対策法についてお話していこうと思います。
Contents
算数オリンピックとは
算数オリンピックの概要
算数オリンピックは、算数を世界の共通語として、世界中の子供たちにゲーム感覚で算数を楽しんでもらうこと、そして未来を担う新たな才能の発掘を目的に、数学者の広中平祐氏により1992年初めて開催されました。近年では、日本のみならず、アジア各国でも開催されいている大会です。
小学生が参加できる大会は現在3つ存在し、対称年齢等は以下の表のようになっています。
大会名 | おおよその対象年齢 | 問題レベルと傾向 |
キッズBEE | 小学1年生~3年生 | IQテストのような問題 |
ジュニア算数オリンピック | 小学4年生~5年生 | 小4修了レベルの範囲 |
算数オリンピック | 小学6年生 | 小5修了レベルの範囲 |
参加方法と大会の流れ
参加申し込み
まずは参加申し込みをしてみましょう。申し込みの期間は、4月~5月頃となっており、参加費は2022年現在税込み4950円です。申し込みが完了すると、6月に開催されるトライアル大会の参加権を手に入れることが出来ます。
トライアル大会
トライアル大会は全員が参加することが出来る、予選のような立ち位置の大会です。全国約200か所で開催されるため、住んでいる場所を気にせず、気軽に受けることが出来ます。トライアル大会は90分の試験一発勝負で、得点上位者がファイナル大会に進出することが出来ます。
ジュニア算数オリンピック・算数オリンピック共に、満点を取る必要はありません。ジュニア算数オリンピックは、5~7割、算数オリンピックは5割ほど正解することが出来れば、ファイナルに進出することが出来ると言われており、ファイナル進出率は約10%、つまり10人中9人はこのトライアルで敗退することになります。
ここで1問、トライアル大会の問題を見てみましょう。
図のように、台形ABCDの各辺を五等分し、辺ADと辺BCの等分した点どうし、
辺ABと辺DCの等分した点どうしを線で結びました。このとき、辺ABと辺DCの等分した点どうしで結んだ線はすべて辺 AB, BC と
平行になりました。また、斜線部アの面積は49㎠,斜線部イの面積は134㎠となりました。
このとき、台形ABCDの面積を求めなさい
引用元:算数オリンピック過去問紹介(公式)
公式サイトに掲載されている、算数オリンピックトライアル大会の過去問のひとつです。具体的な長さが何も書いていない問題ですね。中高生であれば方程式などを活用して解けそうです。しかしこれは算数オリンピック、小学校で習う内容を超える知識は必要ないとされています。小学生の知識のみで解く場合、どのような解法が想定されているのでしょうか?
以下の図は公式サイトに掲載されている図になります。この問題では、「上下反転させて左右に並べるとうまく解ける」という発想力と推察力が求められています。気づきによるある種の気持ちよさがありますね。詳しい解法が知りたい方は、上記のリンクを参照してみてください。
トライアル大会の参加者には参加賞が配布されます。トライアル大会の翌日には解答速報が公開され、約一週間後にファイナル大会進出の可否が通知されます。ドキドキの1週間となるでしょう。
ファイナル大会
ファイナルは決勝大会の位置付けになります。トライアルを勝ち残ったファイナリストが7月、東京・大阪・福岡の3会場に集まり、前半60分・後半60分の120分間で合計7問程度の問題に立ち向かいます。ファイナル大会の得点が上位の9人が表彰。トロフィーの授与がされ、1~3位にはメダルと副賞も授与されます。ファイナル進出者が150人ほどなので、入賞確率は6%と言ったところでしょうか。
当然問題の難易度はトライアルより高くなり、過去には正答率2~3%の問題も存在します。入賞のためにはおよそ60点以上が必要となるため、7問中最低4問を解き切る必要があります。いくら算数が得意でも、算数オリンピック独自の対策なしでの入賞は厳しいでしょう。
算数オリンピックの対策について
ファイナル進出、そして入賞・優勝するためにはどのような対策が必要なのでしょうか。ここからは具体的な対策方法について書いていこうと思います。
対策はいつからすれば良い?
「算数オリンピックの対策はいつからすれば良いのでしょうか?」という問いに対して言えることは、「出来るだけ早く」です。算数オリンピックは特定の範囲の習熟度を測るようなテストではありません。算数的な探求心と発想力を問われる大会です。過去問を見たりするのも大事ですが、もっと大事なことは「算数好きになること」親目線で言うと「算数好きにさせること」なのです。
時計の長針と短針が重なるのは1日に何回か?みたいなことを3~4歳の頃から考えている人もいたり、小学4~5年生で京大入試の数学の問題を解ける人だっているのです。常識にとらわれず、限界を決めつけず。好奇心の力は子供をどこまでも成長させることが出来るのです。
算数オリンピックの具体的な対策法
おすすめの本と教材
幼稚園~小学校低学年の子供を持つ方には、以下のalgoのような「知育パズル」に取り組むことをおすすめします。論理的思考力が身に付き、さらには数字への愛着が芽生えるかもしれません。是非家族内で遊んでみてください。
他にも様々な種類の知育パズルが存在します。また、UNOやトランプ、頭を使うボードゲーム等もおすすめです。これらは小さい子供だけでなく、小学生から大人まで、どの世代でも楽しむことが出来ます。
算数オリンピックの対策の過去問には以下の本のシリーズが良いでしょう。数年分を1冊にまとめて収録されています。対策を始める前に実際の問題を見ておくことで、ゴールのイメージが付きやすくなるため、早めに1冊購入することをおすすめします。
筆者が書いた「灘中学算数対策」の記事では、他にもおすすめの本を紹介しています。併せてご確認ください。
塾や家庭教師を活用する
算数オリンピックの対策は、独学で可能なのでしょうか?もちろん、可能な人もいます。それは、過去問や算数の本を自分から進んで取り組むことが出来る子供のみです。さらに、わからない問題に直面した時は、解説を読んで全てを理解するか、ネット検索などで自力で解決しなければなりません。
大手の進学塾のテキスト内容よりも算数オリンピックの方が問題が難しい場合が多く、大手塾のテキスト内容や、大手塾の先生への質問でカバーすることは厳しいです。
そのため、算数オリンピックの対策をしたい場合、算数オリンピックに対応した個別塾に通うか、家庭教師にお願いすることをおすすめします。塾や家庭教師の活用については以下の記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
算数オリンピックは中学受験や今後に役に立つ?
最後に、算数オリンピックへの挑戦が、今後の役に立つのかについて話したいと思います。算数オリンピックでは、ほとんどの中学入試より難しい問題に取り組むことになります。中学受験をする方は、算数オリンピックに取り組むことで、周りよりも一歩リードすることが出来ます。
さらに、ファイナル進出や、入賞することが出来れば、大きな自信に繋がります。仮に入賞出来なかったとしても、全力で挑戦すること、そして賢い人の存在を知ることは、今後に大きなプラスになると思います。
知の祭典、算数オリンピック。まずは挑戦してみましょう!