中学受験生はどうしても睡眠時間が短くなりがちですが、6~12歳の望ましい睡眠時間は8時間~10時間とされています。しかし実際には、睡眠不足気味の子どもが多いようです。
睡眠不足になるとどのような悪影響があるのでしょうか?睡眠時間を確保するための対策と共に合わせて解説していきます。
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中学受験生の睡眠時間と学力の関係
規則正しい就寝と起床時間が、学力調査の点数に好ましい影響を与えていることがさまざまな研究で示唆されています。
2011年にバルセロナ自治大学で行われた、6~7歳の小学生142人を対象にした調査では、平均睡眠時間が9~11時間の子供は、平均睡眠時間9時間以下の子供より成績が高かったと言われています。
中学受験の時期であっても、毎日9時間は睡眠時間を確保したいです。小学校に登校する時間を考慮して、寝るべき時間を逆算しましょう。起床時間が7時の場合は、22時ごろには寝かせるようにしましょう。
睡眠時間が減ることによる悪影響
睡眠時間が少ないと良くない、睡眠時間をきっちり取ろう、と言われていますが、睡眠時間が少ないと具体的にどのような影響が出るのでしょうか?
ストレスが増加する
人は睡眠中に脳内の情報を整理します。外からの情報に合わせて体内をアップデートしようとするのです。ストレスとは、元来、環境の変動に対する反応のことを言います。よって、溜まったストレスは睡眠によって減少させることが出来ます。逆に、睡眠不足だとストレスが減少せず、溜まったままになってしまいます。
睡眠不足が続くことでストレスが増加し、睡眠障害を引き起こす可能性もあり、悪循環に陥らないためにも、日々の規則正しい睡眠が大切になります。
集中力、注意力の欠如
ここで、レム睡眠とノンレム睡眠について確認しておきましょう。レム睡眠の語源は、Rapid Eye Movement(急速眼球運動)の各単語の頭文字からきています。眠りが浅いとされているレム睡眠では、記憶の整理や定着が行われています。一方、REMのないノンレム睡眠は、脳や肉体の疲れを取る時間とされています。
ロチェスター大学メディカルセンターのマイケル・ネダーガー教授らの研究により、ノンレム睡眠は、脳の老廃物の排泄プロセスに最も効果的であるということが発表されました。
脳は毎日大量のエネルギーを消費し、老廃物を蓄積していきます。ノンレム睡眠中に働く「グリンパテックシステム」により、その老廃物は翌朝尿として排泄されます。この時、寝つきや睡眠の質が悪いと、グリンパテックシステムが十分に働くことが出来ず、老廃物が蓄積されてしまいます。
睡眠不足が続くと、考えがまとまらなくなったり、授業や勉強に手につかなくなってしまい、やる気や体力、思考能力も著しく低下してしまいます。
脳への影響
東北メディカル・メガバンク機構の瀧靖之教授らの実験により、睡眠時間が短い子供と睡眠時間が長い子供の脳を比較した際、脳の「海馬」と呼ばれる部分に明らかな差があることが認められました。
睡眠時間が短い子供の方が海馬が小さかったのです。
海馬は神経細胞の結合を担っていると言われており、短期記憶から長期記憶へと情報をつなげる役をします。睡眠時間が少ないと、この海馬の発達が抑制されてしまいます。さらに、海馬はストレスに対して非常に弱く、ストレスの蓄積により長期間コルチゾールというストレスホルモンにさらされると、神経細胞の萎縮を引き起こします。
結果、長い睡眠をとっている子供と比べて記憶力や成績に差がついてしまう可能性があります。
体調への影響
免疫機能も睡眠の質と関連します。睡眠時間と風邪の発症率の関係を見る研究では、睡眠効率が高い人ほど、風邪の発症率が低下するということが分かりました。
免疫機能の1つである、「抗原抗体反応」を紹介します。 細菌やウイルスなどが抗原であり、この抗原を排除するため、人の体内では抗体と呼ばれる免疫物質を作ります。抗原の情報はしばらくの間体内に保存されるのですが、その記憶期間と睡眠の質とが深くかかわっていると考えられています。睡眠の質が低い人は、抗原の情報の保存期間が他の人より短くなり、風邪をひきやすくなると言えるでしょう。
受験シーズンは出来るだけ風邪をひきたくないです。免疫機能を高めるためにも、普段からしっかりとした睡眠をとることが大事といえるでしょう。
中学受験生が高品質で十分な時間の睡眠を確保するために取るべき対策
以上のことから、受験生は高品質な睡眠を9時間ほど取るべきであるということが分かりました。十分な睡眠を確保するためには、普段からどのようなことに気を付ければ良いのでしょうか?
朝、朝食をしっかり食べる
ぐっすり眠るためには、「メラトニン」というホルモンが大事になります。このメラトニンは、食べ物に含まれるトリプトファンから生成されます。トリプトファンがまずセロトニンに変換され、その後メラトニンになります。夜にメラトニンが分泌されるために、逆算して考えると、朝食をしっかり取り、必要な材料を摂取することが大切になると言えます。
短い昼寝をする
最近では、外資系企業や大手日本企業で、「パワーナップタイム(お昼寝タイム)」が取り入れられていたりします。
眠りが深くなりすぎない、20分を目安に昼寝をすると、集中力の向上や、ストレスの軽減など、さまざまなことに役立つことが分かっています。昼寝に関しては、他の記事で詳しく解説する予定です。
スマホやパソコンは早めにOFF
就寝前に、スマホでSNSやゲームを楽しむ人は多いと思います。しかしこれは質の高い睡眠のためには控えたい習慣です。理由はSNSやゲームで興奮し、アドレナリンが出てしまうことだけでなく、スマホの画面から放射されている「ブルーライト」を浴びると、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が抑制され、眠気を感じにくくなってしまいます。スマホやパソコンの使用は遅くとも就寝の1時間前までにしましょう。
夜に勉強するくらいなら寝たほうが良い
まとめになりますが、課題や宿題が終わらないから睡眠時間を削ってでもやらせる、1日の勉強量が終わっていないから終わるまでやらせる、という教育をしている家庭は、今すぐにやめるべきです。
今回の記事で、きちんとした睡眠がどれだけ大事かが分かったと思います。一時の勉強の遅れを取り戻すために夜遅くまで勉強させると、翌日以降の集中力や、脳の発達に大きな影響を及ぼし、取り返しのつかないことになる可能性があります。悪循環に陥りやすいため、十分気を付けましょう。
きちんとした睡眠をとり、勉強の効率を最大限に高めることが、第一志望合格への大きな一歩となるのです。